80才までの自分の歯を20本保って元気で明るく活力のある人生を送ろうという8020運動とういうのをご存知の事と思います。
日本は今、世界に例のない急速な高齢社会をむかえつつありますが、長生きをして健康でおいしいものを自分の歯で食べられるというのは一番幸せなことであって誰しもの願いなのではないでしょうか。食べるということだけでなく身体を健康に保つ上で歯が如何に重要かということも最近広く話題になりつつあります。
むし歯や歯周病が糖尿病、心臓病、その他の病気に関係することもわかってきていますが、よく噛むことが脳への血流をよくして脳の発育に影響し若年者においては頭脳の発育に影響を与えると言われます。高齢者においてはボケや脳梗塞にも大きく関係してくるようです。寝たきりになりかかっている高齢者が歯の治療をしたり義歯を治してよく噛むようになったため活気を取り戻して歩行できるようになったと言う報告もよく聞かれます。そしてもうひとつ大切な問題は口の中の衛生状態が肺炎の大きな原因になることです。その嚥下性肺炎について簡単に述べてみましょう。
一般には肺炎というものは外部から侵入した細菌やウイルスが原因で若年者にも高齢者にも生ずるものですが嚥下性肺炎は少し違います。
我々は知らず知らずのうちにせきばらいするなどして肺に続いている気道に食物や唾液などが入らないようにしているのですが高齢者ではこの嚥下反射や咳反射が鈍くなってきます。
このため食物や唾液が喉に残ってむせたりすることが多くなってきます。このため少量の口腔、咽頭の分泌物などを知らないうちにいつも誤嚥し、そのときに口腔内が不潔になっていると気道内に細菌が侵入してその細菌によって肺炎をおこすことがあります。
これが嚥下性肺炎です。この肺炎は高齢者、とくに寝たきりの方の肺炎の中では大きな比率を占めているようです。
予防法にはいくつかあります。食事のときの姿勢に気をつけたり、食物にとろみをつけて、むせたり食物が喉に残ったりしないようにすることも大切ですが最も大切なことはいつも口の中を清潔にしておくことです。
高齢者では脳卒中の後遺症や認知障害などが原因であったり、寝たきりの方は特に口腔ケアーが不十分となって口の中の細菌が多くなりますので家族の方の協力が必要になります。できれば訪問歯科衛生士の指導を利用するのもよいと思います。
また、義歯を装着していないと顎が安定せず、食物がスムーズに呑み込めなくなるためたとえ固い物を食べない場合でも義歯を入れておくことが大切になってきます。