私が歯科医になった昭和46年(日本高度成長時代の始まりの頃)の幼児、学童の口腔状態は最悪でこの先どうなるのだろうかと大問題になり私も心配していました。
医院で、又歯科医師会や保健所なども予防指導や検診を行って努力してきた結果、その効果が徐々に表れて、現在では3歳児でむし歯を持った子供が珍しいほど激減し、小学生に措いても過去と比較するとむし歯の数は大幅な減少がみられます。
予防の効果がはっきり結果を出しているのです。
また、私の医院においても歯周病を理解し、正しい歯磨きと定期検診でチェックを続けている患者さんはよい口腔状態を保っている人が多く、30年間一本も歯を抜いたことがない患者さんも多くおります。
毎日の心掛け次第で予防できることが、はっきりと証明されています。
人間の歯は胎児のとき(35胎生日~40日)、しかもそのはじめの頃に形成がはじまり乳歯は妊娠中にほとんど作られてしまいます。
さらに永久歯も形成の大部分は乳幼児期であるため、母親の妊娠中および乳幼児のバランスのとれた栄養は歯の形成上、非常に大切です。
生まれてからも、胎内での栄養状態は歯が抜けるまで影響し、たとえ妊娠の初期につわりがひどく胎内で充分な栄養がとれなかった場合でも、一生使う歯ですから、好き嫌いなく何でもよく噛んでバランスよく栄養をとることがとても重要です。
■歯の基質(土台)の材料
良質のたんぱく質
(とり手羽肉、あじ、卵、豆腐、牛乳)
■歯のエナメル質の土台をつくる
ビタミンA
(豚レバー、ほうれん草、人参、バター)
■歯の象牙質の土台を仕上げる
ビタミンC
(ほうれん草、みかん、ピーマン、トマト)
■カルシウムの代謝や石灰化の調節役
ビタミンD
(肝油、卵黄、バター、牛乳)
■石灰化のための材料
カルシウム、リン
(いわし丸干し、牛乳、ひじき)
■歯の抵抗性を強める
フッ素
(海草、肉、卵、牛乳、野菜)
このように身体の内部からの栄養と、外部からの正しい歯垢-プラークの除去、規則正しい生活習慣で、誰もが毎日の食事をするために使う歯を健康に保つことは、自分の歯で食物をよく噛むことができ、消化器や臓器、脳など身体全体を健康に保つことにつながるのです。お母さんのお腹にいるときからつくられている自分の歯を一生大事に使い快適で健康な生活ができるように心掛けていきましょう。
ちょっとした”まあ、いいか”の油断の積み重ねも大きな病気につながることになりかねません。健康の大切さに気が付いたときからはじめましょう。
毎日の予防、心掛けでお金で買えない健康を維持することができるのです。